コロナ禍の長期化を受けて、「空間除菌」という言葉がよく耳に入るようになりました。ただ、空間除菌という言葉は誤解を招く表現でもあり、正しく理解していない場合も少なくないかと思います。このページでは空間除菌を謳う製品が何を表現しているのか、また、どのような点で誤解を招く可能性があるのかをまとめます。
空間除菌とは？
「空間除菌」ときいたときどのようなイメージを持ちますか？
もしそれが、「空間を漂う空気を除菌する」というイメージであれば、空間除菌を謳う製品を誤解してしまう可能性があります。
医学的には、空間除菌という考え方はないともいわれます。それは、空気は漂うものであり、もしその空気の中にウイルスが含まれているとするならば、ウイルス自体も漂うものであるため、それを除菌することは難しいからです。仮にどうしても空気を除菌したいのであれば、密閉空間を作り、そこに、消毒効果のある物質をある程度高濃度で撒かなければいけません。お分かりになるかと思いますが、そのような環境は、ウイルスを消毒するとともに、人間にとっての健康被害も招く結果となります。
このようなことから、「空間を漂う空気を除菌する」ということは、現実的には不可能ともいえるのです。
「空間除菌」を謳う多くの製品が表現していること
空間を漂う空気を除菌することはほぼ不可能だとご説明しました。
ここで、「それじゃあたくさんある空間除菌ができるという製品は何をしてくれるの？」と疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思います。
全ての製品を調査することはできませんので、ここでは、代表的な製品であるパナソニックさんのジアイーノを例に取り上げてみます。
ジアイーノでは、空間を漂う空気を除菌するのではなく、消毒作用のある液体を噴霧することで室内のモノについたウイルスや菌を抑制できる、と説明されています。それから、空気中の浮遊菌・ニオイを吸引して本体内の次亜塩素酸水溶液で抑制することで、空気全体の浮遊菌やニオイを抑制できるとも紹介されています。
つまり、空間を漂う空気をきれいに除菌できるというわけではなくて、室内のモノについたウイルスや菌を除菌し、空気全体のニオイや浮遊菌を抑制するということです。
ドアノブや机のほか、手の届きにくい物の下や背後まで除菌できるという点ではとても効果があると思います。ただ、病院の無菌室のように空間全体を無菌状態にできるというわけではないことをあらかじめ理解しておいてください。
空間除菌は正しい装置と材料で行ってください
コロナ対策に空間除菌をしたいと、誤った方法を実行して健康に被害を及ぼしてしまっている事例が散見されます。
先に取り上げさせていただいたパナソニックさんの製品は、もちろん、安全です。
ただ、消毒作用のある液体として玉石混合なものが販売されていることと同様に、空間除菌を謳う製品にも粗悪品が紛れて売られています。また、インターネット上で溢れている誤った情報をもとに、ご自宅にある装置や薬品を使ってオリジナルな空間除菌システムを作ることで健康被害をまねいているケースもあります。
ウイルスや菌を消毒できるということは、人間の体にも被害を及ぼす危険性があるということをよく理解して、製品を購入する際には正しい知見のもと選ぶこと、また、独自の理解でオリジナルな装置を試してみないことを注意点として意識してください。
特に、厚生労働省が消毒薬として認めている次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合には慎重に判断してください。次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性で人体にも影響の強い薬品です。用法・要領を正しく守ること、そして、決して次亜塩素酸ナトリウムを空間除菌の材料として使用しないことは遵守してください。